中小病院は専門性を捨てて、地域包括ケアを目指すしかないのか?

2017年08月23日 (水)

科目:
内科
コラムテーマ:
業界動向

運営チーム 先生には日ごろから私どもの勉強会にご参加いただいていますが、いつも素晴らしいなあと感じていますのが、60床の病院でありながら、独自の地域包括ケアシステムの構築と、がんという専門性を両立されていることです。そのあたりを詳しく、お伺いできればと思います。

藤木 はい。それには、当院の立地というか、地理的条件も影響しているかも知れません。
まず、第一に当院は立山町で唯一の病院です。地域が高齢化する中で、やはり介護や在宅の受け皿もなくてはならない。これまでと変わらない医療を供給していくために、時代の変化に対して我々自身が変わる必要があります。一般病床からケアハウス、老健、サービス付き高齢者住宅、訪問看護まで一元的に管理し、在宅であっても、病院、介護施設であっても、いつでも診察が受けられ、治療が受けられ、必要に応じて入院もできるようにしたいと考えました。

運営チーム まさに恵仁会版の地域包括ケアシステムと言えますね。

藤木先生 ありがとうございます。第二に、しかし、それだけでもいけない、ということです。やはり、病院の特徴と言いますか、専門性が必要だと思いました。それが、がん治療でした。
これも、立山町という人口2.6万人の町に立地していること、そして、隣の富山市からも患者さんに来院してもらわなければならない、という環境の影響もあると思います。

運営チーム 現在、多くの中小病院様は、専門的なことは今後自院ではできないのではないか?総合的なかかりつけ医、というと聞こえは良いが、逆に言うと専門性のない病院にならざるを得ないのではないか、という危機感を抱いておられます。

藤木先生 そうではないと思います。私自身も10年以上前から「総合診療」を掲げてきましたが、同時に専門性がなければ、これからの病院経営は難しいと考えてきました。

運営チーム 私も全く、同感です。

中小病院で、がんの専門性をどのように活かすのか?

運営チーム 先ほども言いましたように、中小病院の先生方は、専門的なことは大規模病院に集約されるのではないか?中小規模の病院では専門的なことをできなくなるのではないか?という危惧を持たれていると感じる場面があります。

藤木先生 私としては、中小病院だから、一般的な治療しかできない、というのは間違っていると思います。中小病院こそ、治療の独自性を出す必要があると思います

運営チーム 先生の病院では、独自のがん治療を行われていますね。是非、詳しく教えてください。

藤木先生 今、当院で力を入れているのは、「個別化されたがんの集学的治療」です。これは、①低用量化学療法、②ハイパーサーミア、③高気圧酸素療法、④個別化がん栄養・代謝治療を組み合わせた、集学的治療です。現時点では、副作用はほとんど出さずに高い効果を得られる最良のがん治療と考えています。特に、腹水・腹膜播種の患者様に力を入れています。

運営チーム 北陸3県でハイパーサーミア(温熱療法)を行っているのは先生のところだけだと伺っています。なぜ、先生はこのような独自の治療をされるようになったのでしょうか?

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藤木先生 はい。当院のような病院では、先代の頃から、数十年に渡って、通院されている患者様がおられます。中には、当初は血圧だけでかかっていたのが、その後、がんを発症される方もおられます。そういう中で、様々ながんの患者様と向き合い、ベストと思える治療方法を追及した結果、現在の治療法に至りました。

運営チーム 立山町の隣の富山市だけでなく、富山県外、中国からも患者様が来られていると聞いています。凄いですね。

藤木先生 はい。立山町は人口2.6万人の町ですし、高齢化と人口減少は避けられません。将来の病院経営を考えると、富山市や周辺からの患者様に来て頂けるのは重要なことだと思います。

全国で病床利用率が低下する中、患者様の確保は院長の大切な仕事

藤木先生 実際には、医者として、プレイヤーとしての仕事が9割以上です。しかし、常に病院の経営、法人の経営のことは考えています。運営チーム ところで、先生は医者として、朝から晩まで患者様と向き合って、診療を行いながらも、経営者として、常に先を考えて手を打っておられる印象があります。そのあたりは実際には、如何ですか?

運営チーム 藤木先生の考える、院長の仕事とはどういうものでしょうか?

藤木 もちろん、第一は医療の質の向上です。私共のような小規模な病院では、院長は院長室に座っているのではなく、現場の指揮官ですから、現場のスタッフを率いて、診療に当たっています。その中で、患者様にベストの医療を提供していくこと、これがもちろん最優先です。

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運営チーム それはもう、その通りですね。

藤木 しかし、以前はそれだけでも経営が成り立っていたかも知れませんが、現在はそういう訳にはいきません。同時改定も目前に控えています。
院長の役割として、①医療の質の向上以外にも、②コンプライアンスの遵守、③患者様の確保、④経営数値の把握、⑤中長期の経営戦略が重要だと思います。

藤木先生が登壇の病院経営セミナー
「中小病院は地域包括ケア+専門性で勝ち残れ!」
2017年10月1日(日) 東京会場

それぞれの地域にはそれぞれの地域の事情がありますし、また、それぞれの病院には個性があり、強みがあります。

その中で、どのように現在の環境変化に適応し、地域包括ケアの中での役割を描いていくのか、自院をどう活かしていくのか、これが実際に現場で求められていることです。

そんな中で、弊社の勉強会で、藤木先生を含めて、全国からご参加の先生方とお話ししていた際に浮かび上がってきたのが、「地域包括ケア+専門分野」というキーワードでした。

そこで、今回の病院経営セミナーでは、藤木先生をゲストにお迎えし、「中小病院経営の決め手は、地域包括ケア+専門分野」と題して、「地域包括ケア+専門分野」の具体的な進め方と全国の成功事例について、お伝えさせて頂きます。

制度説明のセミナーではなく、直接、病院経営にお役立ていただける、具体的な事例と実践ノウ
ハウを中心にお伝えさせて頂きます。

地域包括ケアシステムの中で、自院の専門性を伸ばしたいとお考えの理事長先生、院長先生のご参加を心よりお待ちしております。

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