中小病院の専門化とブランド化-診療報酬改定に左右されない経営を実現するために

2018年05月22日 (火)

image001 右:社会医療法人 相良病院
理事長 相良吉昭 氏

左:株式会社 船井総合研究所
取締役 出口 恭平

80床の病院ながら、乳がんの症例数で鹿児島県1位に

出口 相良病院は、乳がんの症例数では鹿児島で1位、全国でも5位です。他の上位の病院は、大規模病院ばかりですから、本当に凄いと思います。これは、どのように実現されたのでしょうか?

相良先生 現在、鹿児島県の7割ぐらいの乳がん手術をしています。もちろん、診療の質が高い、ということも大事ですが、トータルケアが大事だと思います。心のケアもそうですし、緩和ケア、健診から予防までトータルでサポートする体制を整えて、「乳がんと言えば、相良病院」というブランドに繋がったのだと思います。

出口 県内のシェアが7割以上というのは、凄いブランド力だと思います。最初に、鹿児島で展開されている4つの施設の役割分担について、お教え頂けますでしょうか?

相良先生 はい。まず、乳房に不安を感じたらブレストセンターを受診します。乳がんと診断され、手術や放射線治療など、治療が必要となった場合は、相良病院に入院します。退院後、定期フォローが必要な方はパース通りクリニックを受診します。
その他の女性の疾患は鹿児島中央駅にあるさがら女性クリニックが担当します。

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「乳がんと言えば、相良病院」、「女性のための専門病院」への道程

出口 先生のところは「乳がんと言えば、相良病院」というブランドを確立されていて、素晴らしいと思います。女性専門のクリニック(診療所)はありますが、病院で女性専門を明確に打ち出されているところは、全国でも殆どないと思います。これまでの専門性を強化されてきた道のり、ブランド化に至った道のりをお伺いできればと思います。

相良先生 ありがとうございます。相良病院は1946年に私の祖父が一般外科として開業したところから始まります。当初は一般外科をやっていたのですが、1973年に九州で初めてマンモグラフィを導入しまして、一気に乳がんの患者さんが増えました

出口 その頃はまだ、男性の患者さんもいらした訳ですよね?

相良先生 はい。完全に女性に特化するようになったのは、患者会「いずみ」(会員数現在1000名)を設立した頃です。

出口 完全に女性に特化しようと思われたのは、どういう背景だったのでしょうか?病院は専門性を志向される一方で、何かを捨てて、ということが、なかなかできません。

相良先生 はい。乳がんの患者さんが増える中で、やはり男性の患者さんが一緒にいると、安心して治療を受けにくい。病室が一緒というのも難しい。そういう現場の課題を1つ1つ解決しようとする中で、気がつけば女性に特化していたというのが実態です。

最初はたくさん患者さんを診ること、次には、患者さんのトータルケアへ

出口 乳がんの患者さんのこと、治療のことを考えて対応してこられた結果が、専門化であり、後には女性特化になった、とうことですね。

相良先生 そうです。最初は、とにかく現場が頑張って、断らずに、たくさんの患者さんを診てきた、ということだと思います。それから、次には患者会を作ったり、心のケア、お子さんのケア、緩和ケア等、トータルで患者さんを支援することに力を入れてきました。

出口 素晴らしいですね。ところで、トータルケアとか心のケアと言うのは簡単ですが、経営的には難しい面もあると思うのですが・・・。

相良先生 私自身も実家の病院に戻って経営を考えた時に、その点は迷った時期もありました。しかし、がん医療には、心のケアやがんの親を持つお子さんのケアは絶対に必要なものです。患者会なども、不採算だけれども大事なことがある。そういうことをしっかりやりながら、経営として成り立つように、ということでやってきました。

出口 船井総研では「社会性と収益性の両立」ということを言っていますが、先生はそれを凄く高いレベルで実践しておられると思います。

スーパースターに頼らないブランド化

出口 先生は、スーパースターに頼らない、「病院としてのブランド」ということを言われています。

相良先生 はい。私が医師国家試験に通った年に、相良病院にいた医師がやめてしまい、医師数の問題で研修を受けずに相良病院に帰ってきました。その時、いち医師に頼ってしまう病院運営の危うさを感じました。その経験からも、スーパースターに頼るようなブランド化はしたくない、と考えました。

出口 スター医師を他の病院からスカウトしてくる、というようなことでは駄目、ということですね。

相良先生 はい。そういうことは、一切していません。そうではなくて、スターに頼らず、病院として、トータルケアでブランド化する。そうすることで、逆に、全国でも有名な先生が「相良病院で働きたい」と言ってくださるようになりました

全国初の特定領域がん診療拠点病院に認定

出口 2014年には特定領域がん診療拠点病院に認定されています。

相良先生 はい。当院は多くの症例数がありましたが、それだけでは認めてもらえません。当院は、離島医療もやっていますし、先ほどお話したような心のケア、健診から緩和まで含めたトータルケアをやっています。そういうことを厚労省にプレゼンして、この制度を作ってもらいました。

出口 認定された、と言うよりも、制度を作ってもらった、ということですね。

相良先生 はい。がん医療に必要な社会性の高いことをやろうとすると、不採算なこともあります。それを諦めてそのままにしておくと、永続する仕組みはできません。仕組みを作ることや、制度を作ることも含めて、やらなければならないと思います。

出口 時折、病院の経営者で「制度や診療報酬改定に振り回される」という方がいますが、先生は逆に、やるべき医療を行って、それに合わせて、制度を作ってしまう、ということですね。本当に素晴らしいです。

離島での乳腺外来の取り組み

出口 今、離島医療のお話が出ましたが、離島はどのような取り組みをされているのでしょうか?

相良先生 鹿児島は非常に離島が多いのです。これらの島には内科のドクターはいても、乳がんを診るドクターはいません。こういう島に、飛行機でドクターを派遣しています。今日の午後は、私も霧島行きます。

出口 先生ご自身も行かれているのですか?

相良先生 はい。離島は高齢者が多いのですが、高齢者でがんの方が飛行機で鹿児島まで来るのは大変です。手術の時だけは相良病院に来てもらいますが、それ以外は、我々がドクターを派遣して、地元の医療機関で医療を行います。経営的には持ち出しなのですが、そうすることで、最後の段階まで、自分の島で過ごして頂くことができるのです。霧島には毎週、奄美に月2回、徳之島にも毎月行っています。

出口 それは本当に素晴らしいですね。

相良先生 当院は、へき地医療で社会医療法人になっているのですが、これは甑島に内科のドクターを派遣して取っています。しかし、他の離島も「医療のへき地」ではなくても、「乳がんのへき地」ではあるので、「へき地」に認めてもらいたいと思っています。

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専門性を活かしたグループ経営展開

出口 話は変りますが、現在、グループ経営への展開をされていると聞いています。

相良先生 はい。これまでの当法人の経営の段階で言うと、第一段階は、乳がんの患者さんを沢山診ることでした。そして、第二段階は、不採算なことも含めて、トータルで患者さんを支援することでしたそして、それを第三段階では、特定領域のがん拠点病院として、仕組みづくりをしてきました。第四段階は、これまで相良病院で蓄積したノウハウを生かして、グループ経営を進めています。具体的には、例えば、薬剤の仕入れについて、大幅にコストダウンすることが出来ています。このようなノウハウを生かして、それぞれの地域で乳がんの治療でトップであるような医療機関と提携したいと考えています。

出口 現在、既にグループ化をされていて、グループ全体では乳がんの症例数は日本一と伺っています。

相良先生 はい。グループとしては、日本一の症例数となりました。

出口 他の地域の同じ専門性を持つ法人の連携、というのも大きな可能性がありますね。

相良先生 非常に相乗効果が高いと思います。

相良先生が登壇の病院経営セミナー
「中小病院の専門化とブランド化」
2018年7月8日(日) 東京会場

医療費・社会保障費の破綻が懸念される2025年問題に向けて、医療業界の改革が推し進められる中、2018年度診療報酬改定では、かかりつけ医機能や在宅医療機能を強化することが指し示めされました。今後は、病床機能分化が加速していく中で、自院が進んでいくべき方向について判断を迫られる機会が増えていくでしょう。 image001

中小病院がこういった時代を生き残っていくためには、地域包括ケアシステムの一端として、かかりつけ医機能や在宅医療の機能を持つだけでなく、専門性やブランドを高めることが一つのキーワードとなります。

そこで今回の病院経営セミナーには、相良先生をお迎えし、「診療報酬に左右されない経営を実現するための専門化とブランド化」と題して、ご講演いただきます。さらに中小病院の専門化とブランド化について全国の成功事例もお伝えさせていただきます。

今回は、診療報酬改定の説明セミナーではなく、実際に病院経営に役立てていただける、具体的な事例とノウハウを中心にお伝えさせていただきます。

より一層、病院経営が難しくなっていく時代の中で、今後専門化やブランド化を考えていらっしゃる理事長先生、院長先生のご参加を心よりお待ちしております。

セミナー概要

日程◆東京:2018年7月8日(日)

時間◆13:00~17:00(受付開始12:30~)

場所◆東京:船井総合研究所 東京本社

料金◆一般企業:32,400円(税抜) / 会員企業:25,920円(税抜)

※会員企業様とはFUNAIメンバーズPlus(無料お試し期間は除く)
各業種別研究会にご入会中の企業様です。

第一講座

2025年を見据えた中小病院の専門化戦略

株式会社船井総合研究所

地域包括ケア支援部 部長 北里 淳

第二講座

鹿児島発、日本一の女性専門病院へ

社会医療法人 博愛会 相良病院

理事長 相良 吉昭先生

第三講座

病院の専門化を全国の事例から検証する

株式会社船井総合研究所

地域包括ケア支援部 内田 亮太

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