オンライン診療

オンライン診療とは

 今、医療業界で最も注目を浴びている医療の一つに、オンライン診療サービスがある。このサービスを利用すれば、診察をビデオ通話で行うことができ、更には処方箋や院内処方された薬を患者の元に届けることができる。主に、医療機関に行く時間を確保できない多忙なビジネスマンや医療機関から遠隔地に住んでいるために定期的な来院が困難な人々を対象に大きな需要があるサービスだ。実際に活用している患者からオンライン診療の利便性の高さに対して絶賛されている医療機関も多い。  遠隔診療(オンライン診療)はもともと平成9年に厚生労働省から「直接の対面診療を行うことが困難である場合(僻地や離島に患者様が住んでいる場合)」に指定9疾患の患者様を対象に認められていた。しかし、2015年8月から現在にかけて厚生労働省から遠隔診療についての事務連絡が通達され、オンライン診療は大きな変化を見せた。変化の内容は大きく分けて以下の三点。   (1)僻地や離島を対象にしていた地理的条件の撤廃→都市部でのオンライン診療が可能になる (2)対象疾患の指定解除→「直近まで相当期間にわたって診療を継続してきた慢性期疾患の患者など病状が安定している患者」の条件を満たしていれば、対象疾患に制限がなくなる (3)初診の遠隔診療の禁止→「初診及び急性期の疾患に対しては、原則として直接の対面診療によること」という留意事項が追加され、医師が遠隔診療の対象となると判断できるまでは遠隔診療に移行できない   このような厚生労働省からの通達、遠隔診療の明確化が行われ、各医療機関やシステム会社は遠隔診療、即ちオンライン診療サービスの開発、展開に力を入れ始めている。

先進事例 オンライン診療

総括

 オンライン診療はその利便性の高さから、患者の治療継続率の向上をもたらしており、大きなメリットとなっている。患者はオンラインで診療を容易に受けられ、病気が完治するまで診療を受け続けることで、健康水準は高まり、医療機関にとっては安定した医業収入に繋がる。オンライン診療サービスは患者、医療機関、双方にとって魅力のあるサービスなのである。  しかし、現状のオンライン診療には課題がある。それは診療単価が大幅に下がってしまうことだ。オンライン診療では患者に請求できる医療点数は電話再診料、処方箋発行料、調剤料が主であるため、診療単価が減少してしまい、医療機関の売上減少に繋がる恐れがある。医業収入の維持、増加を図るためには、オンライン診療の時間効率向上の意識が必要になる。医師の空き時間の活用や、予約時間枠の効率的な設定など、各医療機関に合ったオンライン診療の導入方法を検討しなければならない。  また、予約料の設定も有効である。保険診療の中で、唯一自由に金額が設定できるのが予約料であり、この金額設定次第では対診の診察料との差を限りなく縮めることができる。実際に予約料を2000~3000円に設定している事例もある。  実際にオンライン診療サービスが導入されているクリニックは内科、皮膚科、精神科、小児科が主であり、症状の安定した生活習慣病やアレルギー症状、AGA、禁煙治療、などの治療内容が処方による割合の高いものである。

導入医院紹介

精神科オンライン診療のさきがけ :新六本木クリニック

新六本木クリニック:来田誠院長

 2016年2月の開業以来、株式会社メドレーのオンライン診療システム「CLINICS」を導入して、精神疾患と禁煙外来の遠隔診療を行っている。  その背景には、規制緩和推進策の一環である昨年8月の厚生労働省による遠隔診療解禁通知と、「受診できず、症状が悪化する人を減らしたい」という来田院長の患者への強い想いがあった。  現在は、対面診療とオンライン診療を適宜組み合わせる形で、保険診療と自由診療を行っており、疾患や症状、治療のステージ、患者の希望に応じて柔軟に対応されている。  オンライン診療では、診療予約、問診票の記載、診察、決済、薬・処方箋の配送まで全て来院せずに完結できる、患者にとって非常に利便性が高い仕組みとなっている。それに加え、治療開始率、継続率の向上により治療成績が改善することが期待される。実際に、来田院長の診療している精神疾患患者の中でも、急性期の時期を過ぎて、慢性期の維持療法の時期に、オンライン通院を適宜とりいれることで治療からの脱落を防ぐことができたケースがあるという。  オンライン診療の導入検討時に、診療オペレーションに不安を感じる先生も多いが、実のところは煩雑なオペレーションはほとんど必要ない。例えば、新六本木クリニックでは、来田院長と受付1名の2名体制で、外来対応と並行しながら、オンライン診療で1日10名前後の患者を診療している。  また、診療オペレーションに次いで先生方が心配される点は「機器操作(PCスキル)」である。その点について、来田院長は「オンライン診療に必要なPCスキルは、ネット通販を利用できる程度」と説明している。 まさに、「CLINICS」はスタッフにとって、非常に扱いやすいシステム構造で構築されている。  このような、可能性を秘めた診療システムに対して来田院長は、「2~3年後にはオンライン診療を行っていない医院が逆に目立つ時代が到来するのではないか」と将来を推測しており、そのような来田院長に“いま”業界内外から注目が集まっている。

~オンライン診療イメージ図~

院で診察を行う来田先生

会社のオフィスで診察を受ける患者

新六本木クリニック http://shinroppongi-clinic.com/

専門領域を活かしたオンライン診療に向けて:とうきょうスカイツリー駅前内科

とうきょうスカイツリー駅前内科
金子俊之院長

 とうきょうスカイツリー駅前内科は、2016年1月に開業、オンライン診療サービス「クリニクス」を3月中旬に導入。  院長の金子俊之先生の取り組みは各種メディアからも注目されており、テレビ局からも取材オファーが来ている。  導入したタイミングが開業してすぐであったため、スタッフの抵抗感はほとんどなく、院内における活用は非常にスムーズに行われており、今後は更に効率的な活用を目指している。  現在は一般内科の一部の症状しか対象にできていないが、将来的には金子先生の専門領域であるリウマチ膠原病治療においてオンライン診療を有効に活用していきたいと考えている。オンライン診療を活用することで、医院の診療圏を広げることができ、数少ないリウマチ膠原病の専門医院をより多くの人に活用してもらうようになること、そして他分野における専門医院もオンライン診療を活用することで、患者となる人々が専門性の高い治療を受けやすくなる環境が整われることが金子医師の理想である。

とうきょうスカイツリー駅前内科 http://skytree-clinic.jp/index.html

国境を越えたオンライン診療の活用:大島駅前クリニック

大島駅前クリニック院長
古瀬範之院長

 大島駅前クリニックは2016年3月に開業、オンライン診療サービス「クリニクス」を4月中旬に導入。  オンライン診療の主な対象は症状が安定しており、処方中心の治療ができる内科の症状や禁煙治療としている。大島駅前クリニックは今後は自由診療にまでオンライン診療の対象が広がる可能性があることを視野に入れてオンライン診療を活用していくようだ。  オンライン診療の魅力の一つに遠隔地からの治療が容易になることが挙げられるが、大島駅前クリニックでは現在、アメリカに在住予定になる患者からもオンライン診療の相談を受けている。初診を日本で行い、その後渡米、そしてオンライン診療を通して日本の病院に通い続けることができる、ということだ。遠隔地、といわれたら国内の過疎地等をイメージしがちであるが、オンラインで医療機関と繋がる限り遠隔地に制限はなく、初診の対診さえ行えれば、海外の患者にも治療が行うことができるという事例に繋がるだろう。

大島駅前クリニック http://www.ojima-ekimae.jp/

医師自らオンライン診療システムを構築:お茶の水内科

 お茶の水内科は2014年夏に開業、オンライン診療システムは五十嵐健祐氏自ら開発、2015年12月から導入。  多くの医療機関がシステム会社開発のオンライン診療システムを導入していくなか、お茶の水内科はシステムの独自開発を行っている。五十嵐医師が利便性を向上させるためにシステムとオペレーションの改良を常に行い、診療効率が高いオンライン診療を展開できている。  オンライン診療の対象はかかりつけ患者の再診に限定しており、生活習慣病の治療継続が主で、事前の対面診療にて信頼関係の構築とオンライン診療に関する取り決めの説明と同意を十分に済ませておくことで、テレビ電話によるオンライン診察は短時間でスムーズに終わることが多い。オンライン診療は医院の公式アプリから申し込み可能で、通勤時間や仕事の空き時間などを活用し診療を受けることが出来る。医師も診療の空き時間を活用するなど、医師にとっても大きな負担になることない効率的なオンライン診療が行えている。  五十嵐医師は医業収入の短期的な増加効果はあまり意識していない。オンライン診療の効果は、患者の治療継続の負担の軽減と主治医としてかかりつけ医機能の向上だ。オンライン診療は患者さんによって通院負担の軽減と利便性の向上をもたらし、結果的に、他の対面診療のみでしか医療を提供していない医療機関との一つの差別化になる。これらの要素は集患と患者維持に繋がり、オンライン診療の診療単価の低さを補うものになる。中長期的には、オンライン診療システムは医院としてのロイヤリティとLTV(生涯顧客価値)の向上に繋がっていくことが期待出来る。

お茶の水内科 http://ochanomizunaika.com/

医療機関としての理念を大切にしたオンライン診療:医療法人社団ナイズ

 医療法人社団ナイズとして4医院を展開、白岡亮平氏が設立した株式会社メディカルフィットネスラボラトリーにてオンライン診療システム「Dr.365」を開発し各医院に導入。  白岡医師がオンライン診療の活用にあたって大事にしていることは患者にとっての利便性を高め、疾病の悪化を予防すること、医療経営という観点から継続的な診療を成り立たせることである。オンライン診療については、完全予約制とし、患者さんにお待ちいただく時間を最小化し、利便性を高め、更に予約料を2000円に設定することで、オンライン診療にかかる人件費を含むコストを最適化している。基本的に遠隔診療は電話再診料72点のみの算定が可能であり、対面診療との差は大きいため、予約料の設定により、その差を補うことができ、医療機関にも無理な負担を強いることなく導入も可能となった。また、医療法人社団ナイズの各医院ではオンライン診療を行う際には一度の診察に20分前後の時間をかけるようにし、医療行為としての質が落ちないように徹底している。  白岡医師は医業収入増加に貢献するためにオンライン診療を導入したのではなく、患者にとって医療を受けやすい環境を作り、疾病の悪化を予防するために、医療を受ける選択肢の一つとしてオンライン診療を導入した。収益性をある程度担保しつつ、医療行為としてあるべき姿を追求したオンライン診療の事例である。

医療法人社団ナイズ http://www.mnys.jp/

最後に

今後の展望

 オンライン診療サービスが普及されていくことで、社会的に大きな影響を及ぼす可能性がある。ビジネスマンがかかりやすい生活習慣病への“予防”に繋がる治療が継続的に行われることで、労働人口の中から生活習慣病を発症する人が少なくなる。その結果、労働人口の減少を食い止め、また、生活習慣病患者が減ることで、社会保障費の増大を防ぐことにも繋がる。つまり、オンライン診療は2025年問題などを直近に迎えている日本にとって普及されていくべきサービスであり、厚生労働省からの期待も大きい、正に時流に沿ったサービスといえるだろう。  厚生労働省が推進するサービスであるため、今後、オンライン診療を導入する医療機関は増えていくはずだ。その中で、他院のオンライン診療との差別化を図るために必要になることは、利便性以外に魅力を作ることではないだろうか。厚生労働省が遠隔診療に対して制限や規制を設けている限り、利便性の追求には限界があるため、今でこそ、様々な形態のオンライン診療があるが、そのシステムの行き着く形は恐らく似たようなものになるだろう。そのような状態になれば、利便性以外の魅力が必要になってくる。今はまだ、オンライン診療の利便性を追求していく段階だが、その先の段階を意識したオンライン診療の展開ができることが望ましい。  また、オンライン診療を医業収入に繋げるために、自費診療とオンライン診療の融合させていくことも意識することができる。自費診療であれば、初診からオンライン診療を行うことができ、利便性は高く、自由な価格設定によって医業収入に大きく貢献できる。実際に、薄毛治療に対してオンライン診療を初診から行っている事例もあり、今後の展開に期待が寄せられる。しかし、医療機関である限り、オンライン診療の扱いが自費診療ばかりに傾いてしまうと、世間の目も厳しいものになるだろう。医療機関としての立場や経営の面から、オンライン診療の展開方法は慎重にならなければならない。

2016年9月1日

担当コンサルタント

石原 春潮

石原 春潮
株式会社船井総合研究所 医療・介護・福祉・教育 支援部 コンサルタント

皮膚科を中心にクリニックコンサルティングに従事するコンサルタント。
オンライン診療のような医療業界の先進的な事例に対して積極的な調査を行い、
クライアントへの導入支援を行っている。




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